セキュリティ向上に AI を活用する5つの方法:アプリケーションセキュリティ
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2024年7月12日、Christine Barry
サイバーセキュリティと AI(人工知能)に関するシリーズも5回目を迎えました。今回は、アプリケーションセキュリティと、AI がこれらの攻撃に対する防御をどのように向上させるかについてです。
アプリケーションセキュリティとは?
アプリケーションセキュリティは、アプリケーションのライフサイクル全体を通じてアプリケーションを保護します。ここには設計から開発、デプロイ、継続的なメンテナンスまですべてが含まれます。アプリケーションセキュリティはサイバーセキュリティにとって非常に重要です。以下はその例です。
- Web アプリケーション:ソーシャルメディアプラットフォーム、eコマースサイト、オンラインバンキングポータル
- モバイルアプリケーション:メッセージング、ナビゲーション、マッピング、フィットネス・トラッキング、モバイル・バンキング・アプリケーション
- エンタープライズアプリケーション:顧客関係管理システムや企業資源計画ソフトウェア
- クラウドベースのアプリケーション:ファイルストレージと共有、顧客サービスプラットフォーム、Microsoft 365 のようなコラボレーションアプリケーション
現在使用されているアプリケーションの数を特定するのは簡単ではありません。上記で言及したアプリケーションの総数に、IoT やその他のカスタムアプリケーション、社内アプリケーションを加えると、ざっと見積もって1000万近い単独のアプリケーションが存在することになります。これは、利用可能なアプリケーションの数に過ぎません。これらのアプリケーションはそれぞれ、2023年時点で1つにつき7億近くダウンロードされています。これはすなわち、巨大な攻撃対象だということです。
アプリケーションセキュリティは「万能」ではありませんが、組織は常に以下の基本的な構成要素を適用すべきです。
- 認証:アプリケーションにアクセスするユーザーの身元を確認すること。
- 認可:認証されたユーザーがどのようなアクションを実行できるかを制御すること。
- 暗号化:送信中および保存中に機密データを保護すること。
- 入力データの検証:アプリケーションに入力されたデータの安全性と妥当性を確保すること。
- エラー処理:エラーメッセージによる情報漏えいを防止すること。
- ロギングとモニタリング:アプリケーションアクティビティを追跡し、不審な動作を検出すること。この重要性については、Twilio の侵害に関する Tushar Richabadas のブログを参照してください。
こうした基本にとどまらず、業界の専門家や非営利団体は、標準化されたセキュリティアプローチを前進させ続けています。たとえば OWASP は、教育と標準化、そしてコミュニティの連携に大きく貢献しています。
OWASP は、オープン Web アプリケーションセキュリティ・プロジェクト(Open Web Application Security Project)の略称で、安全なソフトウェアとアプリケーションセキュリティに対する認識を高める上で重要な役割を果たしてきた非営利財団です。その多くのプロジェクトを通じて、OWASP はいくつかの文書とガイドを公表しています。広く認知されている Top 10 と API Security Top 10 は、アプリケーションをセキュアにし、アプリケーションセキュリティの領域についてより深く学ぶのに役立ちます。また、OWASP モバイルアプリケーションセキュリティのサイトには、セキュリティテストガイドおよびその他のリソースがあります。
アプリケーションの攻撃対象
アプリケーションの攻撃対象領域とは、攻撃者がシステムへのアクセスや、ある環境との間でデータの送受信を試みることができる様々なポイントの総体を指します。ある地区にある家に、それぞれ複数のドアと窓がついていると想像してください。そのすべての扉と窓が攻撃対象となるのです。シンプルな比喩ですが、この概念をわかっていただきやすいのではないでしょうか。
ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)とは、開発者が高品質のソフトウェアを設計、開発、テストするために使用するプロセスです。SDLC は、顧客の期待に応える、あるいはそれを上回る高品質のソフトウェアシステムを作成し、時間とコストの見積もりの範囲内で完成させ、現在および計画中の情報技術インフラストラクチャで効率的かつ効果的に動作させることを目的としています。完全に AI で強化されたソフトウェアライフサイクルには、以下の段階が含まれます。
SDLC のステージ | 詳細 | AI の役割 |
プランニング | プロジェクトの範囲と目的を定義し、プロジェクト計画を作成する | 過去のプロジェクトを分析し、現実的なスケジュールとリソースの見積もりを提供する 文書やコミュニケーションからプロジェクト要件を抽出し、包括的なプロジェクト計画の策定を支援する |
要件分析 | 機能要件と非機能要件を収集し、文書化する | 文書、電子メール、会議メモからの要件抽出を自動化する 要件の潜在的な矛盾や曖昧さを予測する |
デザイン | ソフトウェアがどのように構築されるかを概説するアーキテクチャーおよび詳細設計文書を作成する | 要件に基づき、最も効率的なアルゴリズムとアーキテクチャを提案する さまざまな設計シナリオをシミュレートし、潜在的な問題やパフォーマンスのボトルネックを予測する |
実装(コーディング) | 設計書に基づいて実際のコードを書く | 開発中のバグを検出し、改善を提案することでコーディングを強化する コーディングスタンダードの履行を保証する |
テスト | ソフトウェアをテストし、すべての要件を満たし、欠陥がないことを確認する | テストケースを作成し、結果を分析する コードのどの部分が最も失敗しやすいかを予測する 脆弱性を特定するためのセキュリティテストを実施する |
配備 | ソフトウェアを使用できる本番環境にデプロイする | 配備に最適な時期を予測し、配備に関する潜在的な問題を特定する 配備プロセスを自動化する |
メンテナンス | 必要に応じて、継続的なサポートと機能強化を提供する | 運用中のアプリケーションを監視し、問題を検出・予測する パッチ適用とアップデートの適用を自動化し、アプリケーションを最新かつセキュアに保つ |
ソフトウェア開発ライフサイクルの各段階でセキュリティを実装することにより、潜在的な脆弱性を早期に特定し、緩和することができます。
アプリケーションセキュリティにおける AI の役割
AI はアプリケーションセキュリティにおいて多くの役割を果たします。以下の機能は、AI 統合の主な利点として挙げられます。
- 高度な脅威の検知と防御:AI は膨大な量のデータをリアルタイムで分析し、セキュリティ上の脅威を示す異常やパターンを特定することができます。従来のルールベースのシステムとは異なり、AI は過去のデータから学習し、新たな脅威に適応することで、これまで知られていなかった巧妙な攻撃を検知することができます。
- リアルタイムの監視と対応:AI がアプリケーションのアクティビティを継続的に監視することで、潜在的な脅威をリアルタイムで検知し、対応することができます。これにより、攻撃者の隙を最小限に抑え、サイバー攻撃の影響を軽減します。
- インシデントレスポンスの強化:AI はインシデント対応プロセスを自動化および合理化し、セキュリティ侵害の迅速な特定、分析、封じ込めを可能にします。これにより、ダウンタイムが短縮され、潜在的な損失が軽減されます。
- 誤検知の削減:従来のセキュリティシステムは、多数の誤検知アラートを生成し、セキュリティチームをてんてこ舞いさせることがよくあります。AI は本物の脅威と良性の活動を正確に区別できるため、誤検知が大幅に減少し、セキュリティ担当者は本当の脅威に集中できるようになります。
- 予測分析:AI のデータ分析能力は、現時点に限定されません。過去のデータやリアルタイムのデータを分析することで、AI システムは将来のサイバー脅威を予測することができ、企業は先手を打って対策を講じることができるのです。
それぞれをさらに掘り下げて、どのような仕組みになっているかを見てみましょう。
高度な脅威の検知と防御
- ベースラインの確立:機械学習モデルは、通常のアプリケーション動作、ユーザーアクション、データフローを分析し、典型的なアクティビティのベースラインを作成します。
- リアルタイムのモニタリング:AI システムは、アプリケーションのトラフィック、ユーザーの行動、システムイベントを継続的に監視します。
- パターン認識:高度なアルゴリズムが、潜在的なセキュリティ脅威を示す可能性のある、確立されたベースラインからの逸脱を識別します。
- 文脈分析:AI は様々な文脈要因を考慮することで、誤検知を減らし、本物の異常を正確に特定します。
リアルタイム監視と対応
- 即時ミティゲーション:AI は、疑わしい IP アドレスを自動的にブロックし、悪意のあるセッションを終了させ、リアルタイムでユーザーアクセスを制限することができます。
- 適応型セキュリティポリシー:機械学習モデルは、進化する脅威パターンに基づいてセキュリティルールを動的に調整することができます。
- インテリジェントなアラート機能:AI がセキュリティアラートの優先順位付けと分類を行い、セキュリティチームが最も重要な脅威に集中できるようにします。
- 予測的防御:AI は、過去のデータや攻撃パターンを分析することで、将来起こりうる攻撃を予測し、先手を打って防御することができます。
インシデントレスポンスの強化
- リアルタイムの脅威検知:AI は、機械学習とパターン認識を活用することで、異常な行動を検出し、新たなリスクを特定することができます。
- 自動化されたインシデントのトリアージと優先順位付け:AI と機械学習により、重大性、潜在的影響、緊急性に基づいてセキュリティインシデントを評価、分類、ランク付けします。
- 自律的な対応と修復:機械学習と AI が、人手を介さずに脅威を検知、分析、対応します。
- 継続的な学習と適応:AI と 機械学習(ML)アルゴリズムは、過去のセキュリティデータと脅威インテリジェンスデータを分析して攻撃パターンを特定し、予防策を実施することができます。
誤検知の削減
- パターン認識のための機械学習:ML はアルゴリズムと統計モデルを使用して、データのパターンと規則性を識別します。これにより、ソリューションは複雑なパターンを認識し、正常な動作のベースラインを確立することができます。
- コンテキスト分析:ML は、時間帯やユーザーの役割などの要素を他のベンチマークと一緒に考慮することで、精度を向上させ、誤検知を減らすことができます。
- 自然言語処理(NLP):NLP 技術は、AI システムがコード内のコメントや文書を理解することを可能にし、本当の脆弱性と無害なコード要素を区別する能力をさらに高めます。
- フィードバックによる継続的改善:開発者とアナリストがフィードバックを提供することで、AI モデルは正しい検知と誤検知を区別する能力を向上させられます。
予測分析
- 過去データの分析:AI システムは、これまでのセキュリティインシデントやユーザー行動、ネットワークトラフィックなどの過去データを分析し、潜在的な脅威を示すパターンや傾向を特定します。
- リアルタイムのデータ相関:リアルタイムのデータを継続的に監視することで、AI は現在の活動と既知の脅威パターンを関連付け、潜在的なセキュリティ侵害を予測することができます。
- 脅威インテリジェンスの統合:AI は脅威インテリジェンスフィードを統合し、最新の脅威ベクトルや攻撃手法に関する最新情報を提供します。これにより、新たな脅威を予測し、緩和することができます。
- 継続的な学習と適応:AI システムは新しいデータから継続的に学習し、アナリストから誤検知や新たな脅威に関する情報を受け取ります。モデルは定期的に更新され、予測精度が向上します。
AI の中身
機械学習はアプリケーションセキュリティにおける AI の基礎ですが、他の種類の AI もアプリケーションセキュリティを大幅に強化します。ここでは、機械学習を補強するために使用される最も一般的な AI の種類を紹介します。
- ディープラーニング:パターン認識の精度を向上させ、操作された画像の検出やその他のセキュリティ目的のために視覚データをより良く分析します。ディープラーニングは機械学習のサブセットです。
- 自然言語処理(NLP):ログファイル、セキュリティアラート、テキストファイルを分析することで、セキュリティを向上させます。また、ユーザーのクエリやコマンドを分析し、潜在的なインジェクション攻撃を特定します。
- 生成 AI :安全なコードスニペットの生成を自動化し、潜在的な攻撃シナリオを生成し、ポリシーやドキュメントの作成を支援します。
- 強化学習:アダプティブな防御戦略と最適化されたセキュリティ構成を可能にし、脆弱性を特定するための自動テストを実施します。
AI 技術と従来の機械学習アプローチを組み合わせることで、より包括的な脅威検知と迅速な対応が可能になります。アプリケーションセキュリティを最大化し、アプリケーションの攻撃対象領域を縮小するためには、このような多面的なアプローチが必要です。
バラクーダによるサポート
Barracuda Application Protection は、Web アプリケーションと API の完全で強力な防御を提供します。AI によって強化されたセキュリティがアプリケーションを保護し、導入がオンプレミス、クラウド、またはハイブリッド環境であるかにかかわらず、セキュアなアプリケーションデリバリを可能にします。詳細は Barracuda Application Protection をご覧ください。
新しい e-Book も
バラクーダはこのほど、「Securing tomorrow: CISO’s guide to the role of AI in cybersecurity(サイバーセキュリティにおけるAIの役割に関するCISOのガイド)」と題した e-Book を出しました。この e-Book では、セキュリティリスクを調査し、サイバー犯罪者が攻撃の規模を拡大し、成功率を向上させるために AI の助けを借りて悪用する脆弱性を明らかにしています。今すぐ e-Book の無料コピーを入手して、最新の脅威、データ、分析、ソリューションのすべてをご自身の目でお確かめください。
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5 ways AI is being used to improve security: Application security
Jul. 12, 2024 Christine Barry
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